ベトナムの田舎の祭り

その日、ベトナム・ニンビン省で、私たちが支援した井戸掘りとトイレ、台所の完成を祝ってその家を辞した後、前から行列がきた。一瞬葬式の列かと思った。村の人が祭りだと教えてくれた。今年は、この辺では大きな祭りだという。

車もどうせ通れないならと、降りて写真を撮らせてもらうことにした。

御輿がきた。４台の御輿が、やがて近くの祠の境内に集合した。しかし、日本の祭りと違うのは、カネや太鼓の音も少なく、村人の声はでているが、熱気に包まれた雰囲気ではなかった。御輿を担ぐ若者も、大声を上げるわけでもなく、御輿がぶつかり合うわけでもなく・・なにか淡々と担がれていく。それが瞬間的に葬式かと思わせた原因でもある。

そして、金魚掬いや綿飴の屋台も射的もなく・・おカネをつかわない静かな祭りだった。収穫を祈る春の祭りなのか？　少年　青年　壮年が活躍していた。

人垣の後ろで、私の娘がつま先で立って見ようとしていると、すっと椅子を運んでくれた女性がいた。いつもながら、よそ者に親切な国民だと思う。そういえば、この翌日、小学校の校庭で児童と握手していると、一人の男の子が、「お元気ですか」と言ってきた。滅多にないこういう経験を重ねると、ほんとにまたベトナムが好きになってしまうのだ。


(2008.04.19　シドニー・ボーイ記)